山本君は地方に住む母親に、毎月5万円の仕送りをしています。
もう3年間、続けています。
父親が3年前に亡くなってから始めました。
残された母親の収入源が年金だけでは生活が苦しいだろうという思いやりの表現でした。
母親はそのつど、拙い字と素朴な言葉でお礼のハガキを送ってくれました。
母親が亡くなりました。
野辺送りを済ませ田舎の兄と遺品を整理していると、山本君名義の預金通帳が出てきました。
不審に思ってページを開くと、入金6万円の刻字が何十段と連なっていました。
それは山本君が仕送りを始めた時期から続けられていたのです。
ぼろぼろと涙が溢れ、開いた通帳の上に落ちました。
親を思う心にまさる親心。
いくつになっても親は親、子は子なのです。
母親は山本君からの仕送りに手をつけるどころか、さらに生活費を切り詰めてプラス1万円をひねり出して、息子のために月6万円の貯金を続けていたのです。
大橋直久(マナー講師)