誤解を招かないで、顧客を納得させるよう話をすすめるためには、「ラポール」ということを知っておくと便利です。
フランス語で「調和」とか「一致」を意味する言葉ですが、これは対話のもっとも理想的な状態をさします。
つまり、いま自分と、相手との間で、話の進展具合がどうなっているかを考え、一致させる必要があるということです。
二人の人間が対話をする場合、考えられるのは、つぎの五つのケースです。
(1)両方がわかっていないことを知りながらだまっている
(話し手が、表現がへたで、聞き手も聞き方がへた。それぞれがあとで修正しようと思っている)
(2)話し手がへたなために、聞き手によくわからない
(3)話し手は正しく表現しているが、聞くほうが聞きちがえる
(4)双方が理解しているようで、じつは誤解している(1とちがって双方気がついていない)
(5)相互理解(双方が正しく話し、まちがいなく聞いている)
この五番目の状態がいわばラポールですが、困るのは、他の四つの状態でも表面上はスムーズに対話をしているようにみえることです。
先の例でいえば、両替で問題をおこしたのは、話し手がへたなためです。
割引手形の場合は、聞くほうの早合点ともいえるが、結果的には双方の誤解です。
交渉ごとでは、「いった」「いわない」でもめることがありますが、そういうことがおきるのは、ラポールの状態で話がすすまなかったからといえます。
話すときは、つねに相手に自分の話していることが、正しく伝わっているか、相手が不愉快になったり、内容を誤解していないかを、確かめる必要があります。
大橋直久(マナー講師)